「急性扁桃炎 その5(急な発熱。)」

昨夜は眠剤のおかげで

ぷつっと切れた様に眠る事は出来たが

疲れは全くとれなかった。

 

ただ、

熱は36度台後半に落ち着き、

膿も消え、炎症も収まっている。

順調だ。

 

朝、検診。

ネプライジング(吸入)一日3回、

うがい一日8回。

このルーティンは前回と全く同じ。

だから、

丸一日寝っぱなしって訳にはいかない。


忘れない様に枕元にあるホワイトボードに書く。

 

今日は妻が顔を出してくれた。

今回の入院は前回程では無いが

迷惑かけてしまっているのは間違い無い。

(前回は猫のたんたんの事もあったので。)

本当に申し訳なく思う。

 

こうして一日中病室にいると、

看護師さん達の大変さだけが

浮き彫りになって行く。

 

勤務内容そのものが大変すぎるのに加え、

やはり一番は患者さんとのやり取りだ。

もう聞いていて(聞こえて来て)

きー!なるもん。

 

それでも看護師さん達、

もの凄くさらっとかわし

相手の気分を害すことなく、

とはいえ、

ただただ言いなりになるのではなく、

伝えたい事、やって欲しい事は

優しくきっちりと伝えている。

 

勤務で体力が削られ、

受け答えで精神も削られ、

それでも元気一杯に頑張っている。

本当に、本当に感謝しかない。

 

もちろん、

患者側が悪いと断ずる事も出来ない。

そもそも病気がそうさせているかも知れないし、

歳のせいもある。

入院生活が寂しいのもあるし、

元々の性格もあるだろう。

ただ、

それを十二分に考慮しても

看護師さん達は大変過ぎる。

総理大臣と厚生労働大臣は

この部屋で1週間過ごしてみるといい。

 

そんな今日、

A君は相変わらず静か。

(夜中のいびきはハンパ無し。)

Cさんは親父そっくり。

(隣に親父がいるのでは?と思うくらい。)

そしてBさんは・・・。

 

Bさんは、

認知症でもあるのだが、

看護師さん達も苦慮している。

 

まず、

ここがどこかが分からないのが問題。

「ここ、どこか分かりますか?」

「分からない。」

「ここは◎◎病院ですよ。」

「◎◎病院なの?。」

◎◎病院の名前は知っているが、

何故自分がここにいるのかが分からないので、

イコール、

自分が病気なのかも分からないし、

何故点滴や挿管されているのかが分からないのだ。

 

何故ここにいるか分からないので、

目が覚めると帰ろうとしてしまう。

帰りたいのに帰れないから

騒いだりしてしまう。

 

同日夜のこと。

23時の点滴を待っていると、

何だか分からないが急に発熱して来た。

扁桃腺に異常は無い。

でも熱い。

先日39度台を4日連続で体験済みとあって、

自分の体温は大体分かる。

間違い無く38度は超えている。

 

(マズい、このままだと退院出来ないよ。)

かと言って、

この発熱を隠す訳にはいかない。

焦る。。。

(どうしよう・・・、何なんだこの熱は?)

 

すると、

斜向いのBさんの所から、

大きなうめき声が聞こえて来た。

この1日で十分聞き慣れてはいたが、

そのうめき声が

だんだんただならぬ様相を呈して来た。

もの凄く嫌な予感がする。

それに沿って自分の鼓動も早くなり、

熱もどんどん上がっていく。

 

するとBさん、

今度は何かいろいろ言いながら

せわしく動いている音がしだした。

 

(うわあ!)

とにかく嫌な予感しかしない。

予感だけでナースコールするのは気が引けるが、

(夜間は1フロア2オペなので。)

自分も熱どころか

具合が悪くなって来ていた。

(呼ぼう。)

 

その時!

ちょうど看護師さんがやって来た。

 

「ああっ!Bさん!」

 

「Bさん、まずは座りましょう。」

「お願い、座って。」

「お願い、座って。」

「お願い、座って。」

看護師さんが絞った低い声で何度も繰り返す。

 

詳細は書けないが、

Bさんが点滴や挿管を無理に外してしまった為、

周りが血だらけになってしまっていた。

 

4人部屋の為、

メインの灯りは点けられない。

小さい照明だけの中、

二人の看護師さんが懸命に処置している。

迅速かつ丁寧な素晴らしい対応だった。

 

「もう大丈夫だよ。」

「怖かったね。」

看護師さん達が

Bさんに声をかけている。

 

(優しいなあ・・・。)

 

その言葉を聞いた途端、

とても気持ちが和らいで

自分の熱もみるみる引いていったのだった。

 

ただ、

さすがにそのままぐっすりと言う訳にはいかず、

眠剤をもらって寝る。

 

「ぐおーっ!ぐおーっ!」

さすがA君。

 

その6へつづく