FBでの紀里谷和明氏のコメント、
そしてそれを受けての数々のコメントが興味深かった。
彼のコメントを要約すると、
自分が雑誌の取材で”撮られる側”になった時のこと。
カメラマンを始め、スタッフがパソコンのモニターを覗き、
あーでもないこーでもない、しまいには編集が細かい指示を出し
それに対してカメラマンが安易に迎合している事に腹が立った。
個々の意見は大事だが、これでは"ケーブルに繋がれた犬"ではないか。
そこでカメラマンに「モニターを皆に見せず、君の好きな様に撮れよ。」
と言ったが、中途半端な笑みではぐらかされた。
結果は予想通り”クソつまらない写真”だった。
そのまま撮影を続けたカメラマンは今月の家賃が払え、
そつなく仕事をこなした編集者は職にあぶれる事もなく丸く収まる。
「そんな写真を撮っていて仕事になるのか?そんな写真で雑誌が成立して売れるのか?」
写真だけでなく、ありとあらゆる現場が”仲良しクラブ”の”学芸会方式”で行われている。
こんなゆるい事をやっていれば衰退するのは当たり前だ。
自分もコメントさせてもらったのだけれど、
写真を始め、どんな現場でもそうだけど
各々が"どこに重きを置いているか”なのだと思う。
重きとは何か?
表現、世界観、個性、お金(予算)、生活、円滑、時間等いろいろとある。
例えば、自分の世界観、個性をお金と時間をかけ表現したい。
それは”拘り”と”現実”の融合であり、それ同士はこの日本では水と油。
残念ながら交わるのは難しい。
遥か昔、某著名な外国人メイクアップアーティストが来日した際、
雑誌の撮影で自分の友人がヘア担当として携わった。
(メイクアップアーティストはヘアはやらないので。)
モデルは1人。彼のメイク時間は約6時間。
(別に長い訳ではない。それが彼のスタイルなのだから。)
メイク終了後、編集者のひとこと。
「ヘアは10分でお願いします。」
メイクアップアーティストは”表現”"世界観"に重きをおいていたし、
彼のページでもあった為、いつも通りに時間をかけた。
一方、編集はモデル1人だし、まさか6時間もかかると思っていなかった。
でも、”表現”"世界観"に重きを置いていれば
いくら何でも”ヘア10分で”とは言えないだろうし、
事前にそこも確認していただろう。
ただ、誰かが悪い訳ではない。
これも”重き”の差異によるもの。
そして今回。
彼は”個性”や”表現”、”世界観”に重きを置いているからこそ、
そのカメラマンのやり様に、
またその状況が許されている今の日本に立腹したのだと思う。
ただ、
その撮影で何に重きをおかれていたのかが分からない上に、
個々の"重き"がどこにおかれていたのかも分からない。
それに”慣習”の可能性もある。
(いつもインタビューページはこうやっているので。)
なので、こうあるべき!と言い切れない事もまた事実。
紀里谷氏は”個性”や”表現”、”世界観”に重きを置いていたと思う。
ではカメラマンはどうだったのだろう?
”自分の好きな様に撮る”には、クライアント(ここでは編集)からの全幅の信頼があり、
いわゆる”トップダウン”、”100%彼に任せる”と言うお墨付きが必要。
そして何より、本人にその意志があったのかどうか。
例えば、
好きな様に撮りたいけれど、その仕事は初めてなのでそこまで言えなかった、
(拘れば、時間もお金もかかるかも知れないから。)
初めてではないけれど、強行して外す訳にもいかないし、
そんな事を言ったら、もう仕事が来なくなるかも知れない。
万が一の時の責任の所在。
または、インタビューページでそういう撮り方をするつもりは毛頭なかった。
紀里谷氏が「君の好きに撮りなよ。」と言ったのだから、
それに乗じて、好きに撮ってしまうと言う手もあったと思う。
一連の状況に因り、
被写体のモチベーションを下げてしまったのは間違いない。
ただ、それでもそれが出来なかった理由があったのかも知れない。
そして編集。
まず、どういう風に撮れているか純粋に見たい。
または、ちゃんと見てチェックしないと心配。
好きな様にやりたいけれど、その権限が無い。
万が一の時の責任の所在。
または、インタビューページでそこまでは考えていない。
他にもいろいろあると思う。
じゃ、
どうすりゃよかったのか。
具体的に一番いいと思われるのは、
「モニター無しで、カメラマンが好きな様に撮って欲しい。」
事前に打ち合わせでその旨を伝え、各々の”重き”を統一する。
それがダメなら、
既に自分サイドで撮影を済ませておき、有りポジ(データ)を使ってもらう。
それか断るか。
これしか無いのかなあ。
写真を撮る事を生業とする人。
”カメラマン”と呼ばれているが、これは和製英語。
英語では"カメラマン"は映像を撮る人の事で
写真を撮る人は"フォトグラファー"と言う。
その中には大きく分けてふたつの種類があり、
”職業カメラマン”と”フォトグラファー・写真家)”
に分かれている。
前者は、クライアント(発注側)の意向を優先。
後者は自分の表現、世界観を優先。
日本では後者が圧倒的に少ないので、差は分かりづらいと思う。
イラストレーターと画家の違いと思ってくれればいいと思う。
ただ、
前者が人のいいなりで、後者が自由奔放なアーティストと言う訳ではない。
どちらも立派な職業だし、センスも技術も要る。
どちらを選ぶかは個々の自由。
自分は美容師からヘアメイクになり、ヘアメイクをやりつつも
カメラをやりたくなったのは、自分の世界観を表現したかったから。
だから後者の道を選んだ。
カメラに関してはまだまだこれからだけれど、
自分の好きな事が出来るのは幸せな事だし、それは”夢が叶う”って事なんだよね。
夢が叶うなんて夢のようだ。笑
話は逸れたけれど、
興味のある人は紀里谷氏のFBを見てみるといいと思う。
PS
ちなみに、自分が撮影を頼まれた時は。
「モニターを持って行かない。」
「事前にどこまで任せてもらえるか確認する。」
やっぱり後者が大事なのかな。